今回は社員の待遇向上を目指す事業所様にぜひ知っていただきたい「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の最新の変更点についてご案内します。
パール社労士オフィスでも現在多くの申請代行をさせていただいておりますが、近年は要件が段々と厳しくなり、令和4年4月1日からの変更ではさらに要件が厳格化しました。(個人的には「これからは積極的に申請する中小企業の事業所様は少なくなりそうだなあ…」と感じるくらいハードルが高くなりました。)
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」をはじめて耳にした方やご興味をお持ちの方に向けて「どういった助成金なのか」、「その要件が具体的にどう変わるのか」など、下記にまとめましたのでご参考ください。
ざっくりと表現すると【正社員として雇用されていない労働者】(有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者など)のキャリアアップを促進して正社員に転換すること、そして一定の要件をクリアした事業主に対して一定額の助成が受けられる助成金です。
要件として就業規則等に規定した制度に基づいて定められた取り組みを行う必要があるため、日頃から適切な労務管理ができていることが前提です。
対象となる労働者:
(1)支給対象事業主に雇用される期間が通算6か月以上の有期雇用労働者
(2)支給対象事業主に無期雇用労働者として雇用される期間が6か月以上の無期雇用労働者
(3)6か月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している派遣労働者 など
対象となる事業主:
(1)雇用保険の適用を受ける事業所の事業主であること
(2)就業規則その他に規定した制度に基づき、有期契約労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用していること
(3)転換・直接雇用前の6か月と転換・直接雇用後の6か月の賃金を比較して3%以上増額していること
(4)転換・直接雇用日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、対象となる事業所において事業主の都合により雇用保険被保険者を解雇等していないこと など
《申請までの流れ》
(1)キャリアアップ計画書の作成と提出
(2)対象者に向けて計画した取り組みを実施
(3)必要に応じて就業規則等の整備および社内周知
(4)転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施
(5)正社員への転換・直接雇用の実施
(6)正社員転換・直接雇用後、6か月分の賃金の支払い
(7)申請書の作成と申請
(1)(有期 ⇒ 正規):1人当たり 57万円<72万円> (大企業:42万7,500円<54万円>
(2)(有期⇒無期):1人当たり28万5,000円<36万円> (大企業:21万3,750円<27万円>) 【令和4年4月1日以降廃止されました】
(3)(無期 ⇒ 正規):1人当たり28万5,000円<36万円> (大企業:21万3,750円<27万円>)
※<>は「生産性要件」を満たす場合の額となります。
・(上記変更点の1)の補足)既に令和3年10月1日以前に雇入れた【正社員で雇用されていない労働者】を令和4年4月1日以降に無期契約社員に転換して本助成金の申請を行なうことはできない見込みです。
・正社員の定義変更の対象者(上記変更点の2)・3))は【令和4年10月1日以降に正社員転換する社員の方】となるため、少し先の話のように感じますが、【令和4年4月1日以降に雇い入れた社員の方】は確実に対象となります。
・現状の3%以上の昇給要件に追加して、正社員に賞与もしくは退職金の制度がない事業所様は就業規則を改定しない限りはキャリアアップ助成金が使えなくなります。
そのため、キャリアアップ助成金を今後も使いたいのであれば、正社員全体の条件を向上させる必要がありますが、一度就業規則の条件を向上させたものの、後から「やっぱりやめた」と条件を引き下げる…なんてことはトラブルに繋がる可能性もあります。場当たり的な対応ではなく継続できるルールとして慎重に見直しを行うことが大切です。
・今回の変更のポイントは、【正社員として雇用されていない労働者】と【正社員】の線引きを明確に定めることですが、一方で「同一労働同一賃金」に対しても気を配る必要があります。社内で不合理な待遇の格差がないかという点にも注意してください。
・今回の変更は案内段階であり、助成金要件を満たすにあたり就業規則にどこまで細かく定める必要があるのか未だ不透明なところもあります。申請前に事業所様の実態と照らして助成金要件を満たすかどうかの判断を総合的に行うことをおすすめします。
今回の変更によりキャリアアップ助成金は申請のハードルが高くなりました。
就業規則の見直しや全体の待遇のバランスを勘案することが求められます。
当所では、経験豊かなスタッフが申請代行まで、まるっとサポートいたします。
専門のスタッフがご依頼に親身に丁寧にサポートさせていただきます!
お困りの方は一度ご相談ください。(TEL:078-381-6546)
なお、この情報は令和4年度予算の成立および雇用保険法施行規則の改正が前提ですので、今後、変更される可能性がありますことをご了承ください。