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トラック運転手の改善基準告示について

労働政策審議会(労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会)において、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(以下「改善基準告示」といいます。)の改正に向けた議論が進められています。公開されているスケジュールでは、令和6年4月の労働時間の上限規制の施行に向けて、令和4年12月までに改善基準告知の改正・公布がなされる予定となっており、会社は改正内容を注視していくとともに、対応の準備を進めておく必要があります。

そこで今回は、現行の改善基準告示から、トラック運転者に着目し、その内容を解説していきます。

1.改善基準告示とは

改善基準告示は、職業自動車運転者の過労運転による交通労働災害防止を目的として定められた基準です。業種、運転する車両の種類ごとに、トラック運転手、バス運転手、ハイヤー・タクシー運転手に対するものが定められています。
改善基準告示の主なポイントは、労働時間だけでなく、拘束時間、運転時間や労働を離れての休息期間、休日などについても定めを示し、労働条件の改善を図っていることです。労働基準法で規定されている時間外労働や休日労働などの規制以外にも、管理しなければならない項目がある点に注意が必要です。
なお、改善基準告示そのものに罰則はありません。しかし、通常、改善基準告示に基づいて「36協定」を提出している場合が多く、その場合、協定を超える時間外労働等が行われると、労働基準法違反となり処罰の対象となります。

2.拘束時間の規制
拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含みます。)の合計時間をいいます。この労働時間には、運転している時間だけでなく、整備・荷扱い・手待ち時間等も含まれます。

● 1年の拘束時間
1年の拘束時間は、3,516時間(293時間×12か月)が限度です。

● 1か月の拘束時間
拘束時間は原則として、1か月293時間が限度です。
ただし、労使協定を締結した場合に限り、320時間まで延長が可能です。なお、延長できるのは、1年の内6か月までで、1年間の拘束時間が3,516時間を超えてはいけません。
この労使協定においては、以下の事項を定める必要があります。

・協定の適用対象者
・1年間について毎月の拘束時間
・当該協定の有効期間
・協定変更の手続き等

● 1日の拘束時間
1日の拘束時間は、原則として13時間以内とし、延長する場合であっても16時間が限度です。
ただし、15時間を超える回数は1週間につき2回が限度となっています。
※13時間超~15時間の範囲について罰則はないので、13時間はあくまで目安です。実際の運用では15時間以内であればルール上は問題ありません。

なお、改善基準告示でいう「1日」は、暦日ではなく、始業時間から始まる24時間をいいます。

3.休息時間の規制

休息時間とは、勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。

1日の休息時間は、勤務終了後、継続8時間以上必要です。例えば、午後9時に終業した場合であれば、翌朝5時以降でなければ始業することはできません。

なお、翌日が休日の場合は注意が必要です。休日は24時間の連続した時間をいいますが、ここには上記の休息時間は含まれません。つまり、休息時間に24時間を合わせた時間が「1休日」としてカウントされます。

4.運転時間の規制

● 1日の運転時間
2日(始業から48時間)平均で9時間が限度です。

上記に違反するかどうかは、ある日を特定日として、
{(特定日の前日の運転時間)+(特定日の運転時間)}÷ 2
{(特定日の運転時間)+(特定日の翌日の運転時間)}÷ 2
がともに9時間を超えているかどうかで判断します。
超えている場合は違反となり、そうでない場合は違反となりません。 

具 体 例
特定日の前日の運転時間:9時間
特定日の運転時間:9時間
特定日の翌日の運転時間:10時間

この場合、特定日と特定日の翌日は、合計19時間、1日平均9時間30分運転しており、平均9時間を上回っていますが、特定日の前日と特定日の平均が9時間に収まっているため、この特定日は改善基準には違反していないことになります。

● 1週の運転時間
2週間ごとの平均で44時間が限度です。

● 連続運転時間
4時間が限度です。

運転開始から4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して、30分以上の休憩を確保しなければなりません。ただし、少なくとも1回につき10分以上の休憩に分割することも可能です。

5.特例措置

● 分割休息の特例
3.で述べたように、1日の休息時間、勤務終了後8時間必要です。ただし、業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、当分の間、休息期間を拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができます

その回数は、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数が限度とされています。

この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。

● 2人乗車の特例
運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できます
ただし、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限られます。

● 隔日勤務の特例
業務の必要上やむを得ない場合には、当分の間、以下の条件の下に隔日勤務に就かせることができます。

条件1 2暦日における拘束時間が21時間を超えないこと
ただし、事業場内仮眠施設または使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を24時間まで延長することができます。
この場合においても、2週間における総拘束時間は126時間が限度です。

条件2 勤務時間終了後に継続20時間以上の休息期間を与えること

● フェリーに乗船する場合の特例
運転者が勤務の途中でフェリーに乗船する場合には、フェリー乗船時間については原則として休息として取り扱うことができます
これにより、休息期間とされた時間を休息期間8時間(2人乗務の場合4時間、隔日勤務の場合20時間)から減ずることができます。

ただし、その場合においても、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ることはできません。

6.36協定について

●時間外労働
トラック運転手の時間外労働および休日労働は、2.の拘束時間が上限です。つまり、拘束時間の上限時間数から、所定労働時間と休憩時間の合計を減じた残りの時間数が、時間外労働時間数の上限ということになります。
また、令和6年4月から時間外労働の上限が年960時間となりますのでご留意ください。

●休日労働
2週間に1回が限度です。

(飯田)
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