桜の見ごろも終わり、本格的に春の陽気を感じるようになってきました。
新入社員を迎え入れた事業所の人事労務担当者は、入社手続きに必要な書類や雇用契約の内容について、社員から素朴な質問を受けて内心ドキッとすることもあるのではないでしょうか。人事労務担当者としては、そんなときでも「そういうものだから」という回答ではなく「なぜ必要なのか」その理由や背景も含めて説明し、理解を深めてもらえるよう対応したいものですよね。
さて、今回はそんなときに役立つ「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」をご案内します。これは外国人を雇用している事業所はもちろん、雇用していない事業所にも役に立つツールです。外国人向けと聞いて戸惑われるかもしれませんが、日本で働いたことがない外国人向けに労務について易しい言葉でかみ砕いて説明しているため、人事労務初心者にも分かりやすくまとまっています。また、外国人労働者や社会人経験の浅い方が疑問に思うようなポイントが挙げられているので、事業主様やベテランの人事労務担当者にも「社員はそういう疑問を持つのか」等の気づきがあると思います。
資料の中では、残業代や休憩時間の考え方など労働条件に関する項目について(人事労務担当者用)と(外国人労働者用)の説明が記載されています。
以下にその資料の一部を引用いたします。
人事担当者用:
② 基本給について説明するとき
(1)外国人の方へ説明する際のポイント
労働者の国籍や在留資格にかかわらず、最低賃金法に基づく最低賃金額は適用されます。外国人だからという理由で、最低賃金よりも低い賃金で働かせることはできません。この最低賃金額は、基本給と諸手当が対象です。ただし、
●諸手当の一部(精勤手当、家族手当、通勤手当)
●割増賃金(時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金)
●臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
●1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
は最低賃金額には含まれません4。(図2参照。)
日本では、労働者の生活の安定や経済の発展のために、法律で、労働者が必ずもらえる金額が保障されています(最低賃金制度)。
一方、外国では、最低賃金制度が存在しない国もあります。
賃金について説明するときには、国の決まりで必ずもらえる金額が保障されているということを説明しましょう。
また、最低賃金に違反していないかどうか、働く人本人が確認して理解を得てもらうためには、最低賃金の対象に含まれないものについても、併せて説明することが望ましいです。(その他、非正規雇用労働者の正規雇用労働者との同一労働同一賃金については、9⑤を参照してください。)
(2)外国人の方への説明例
・日本では、働く人の生活を守るために、仕事をしたときに会社からもらうことができる一番低い給料<最低賃金といいます>が決まっています。これは、国の法律で決まっています。
・○○県で仕事をする人は、1時間で〇円以上の給料をもらうことができます。これは、国の法律で決まっています。
・1時間で何円以上の給料をもらうことができるかは、住んでいる都、府、県で決まっています。
・あなたの1時間の給料は、【あなたの給料】÷【会社が決めた働く時間数の平均】で計算します。
・この計算のとき、家族手当、通勤手当は、【あなたの給料】の中に入りません。家族手当、通勤手当は、仕事が理由ではないからです。(※家族手当、通勤手当については、2③(2)を見てください。)
・この計算のとき、割増賃金は、【あなたの給料】の中に入りません。毎月同じではないからです。(※割増賃金については、2④(2)を見てください。)
・ボーナス(毎月もらうことのできる給料とは別に会社からもらうことのできるお金)は、この計算の【あなたの給料】の中に入りません。毎月もらうお金ではないからです。
・ボーナス(毎月もらうことのできる給料とは別に会社からもらうことのできるお金)は会社からもらうことができる一番低いお金が決まっていません。
引用先:■外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~(令和3年3月)
分かりやすい資料ですので、ぜひ業務にお役立てください。
他にも人事労務の疑問点などあれば当所にお問合せください。